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2017年01月14日|捻挫
以前、某テレビ番組で「ねんざ」をテーマに取り扱っていたので、録画をして興味深く観たことがあります。
30年前の足首の捻挫の後遺症で足関節が変形して手術に至った例や、20年前の足首の捻挫が股関節や腰に影響を及ぼす例など、少し誇張し過ぎな内容ではありましたが、確かに当院に来られる患者さんにも、似たような症状を呈している方が以前から多数来院されております。
興味深かったのは整形外科医師の方が、靴の減り具合で被験者の方の過去の足関節捻挫を当てた事でした。当院は待合室と診療室が土足なので、私も患者さんの靴底の減り具合を必ずチェックしております。
過去に捻挫の既往歴がない方でも重心が片側に偏り、立位や歩行時に身体のバランスが崩れている方はとても多いです。
片側の腰痛や坐骨神経痛症状の患者さんの中には、疼痛を来たしている側の靴底の外側の減りが強い傾向がありますので、ご自分の履き慣れた靴の底をチェックされてみてはいかがでしょうか。
☞下記の写真は70代の右坐骨神経痛症状を来たしていた患者さんの靴です。はっきりとした右足首の捻挫の既往は患者さんの記憶には有りませんでしたが、膝にはO脚変形がなく、右足関節が回内足でしたので、子どもさんの頃に右足関節捻挫をされたことがあるような靴の減り方です。
左の靴底に比べて右の靴底の踵の外側が極端に減っています。この靴では歩行時の着地の際、右側の踵が沈んでしまい、重心が右側に傾いてしまいます。そのため、右腰部や右股関節部に負担が掛かり、右腰部痛と右下肢痛(坐骨神経痛症状)を呈しておりました。
この患者さんには通常の物理療法や温熱療法、手技療法、就寝姿勢等の生活習慣指導を行い、踵のしっかりとした新しい靴を早めに購入されるように勧めて、数回の治療で症状は改善されました。
尚、靴の底はご自身の足底が当たるところ(インソール)はクッション性の良い柔らかめの方が、腰・膝・踵等の痛みは生じにくく歩きやすいです。また、地面に接する踵部分はアスファルトで削れないようなある程度は硬めの素材の靴が長持ちします。
☞毎日同じ靴を履くのではなく2足の靴を一日置きに履くことが大切です。一日
は靴の乾燥に充てて、靴を休ませてあげることで靴は長持ちします。
履き易い靴と表現される患者さんが多いですが、歩き易い靴が理想です。
また、紐かマジックテープで足の甲の部分が調節出来る靴にしましょう。
次に、下記の写真の靴は中学生女子の患者さんのものです。腰痛で通院されておりました。小学生の時に2回ほど左足関節の捻挫(腓骨剥離骨折を合併)の既往が有り、その時には整形外科で診断を受けて痛みは治まったそうですが、リハビリはなかったそうです。下記の写真を撮りその場で靴の状態を見てもらうと、とても驚いておりました。
①
②
中学生女子の患者さんはこの状態でも靴を見るまでは気付かずにおりました。
上記の写真からお解り頂けるように、①では左の靴の踵部分が外側に傾き、いびつになっています。②では左の靴の踵部分が減ってエアホールまで達しており、数か所に穴が空いてしまっています。
☞左足関節捻挫の既往歴から左足関節が回内足となり、踵の骨が傾いている
為です。よく見ますと、右の靴の裏の踵部分も少し穴が空き始めています。
これでは歩行時の着地の際に、身体は左側へ傾いてしまいます。立位の際にも左側に身体の重心は傾いてしまいます。この靴を履いて生活することは、身体のバランスを崩してしまい、良くないのはお解り頂けると思います。
この中学生女子には、早急に新しい靴を購入するように促しました。また、自覚症状は有りませんが、左足関節の回内足を改善するため、足関節周辺の機能訓練(リハビリ)を指導しました。
さて、足関節捻挫は、負傷後に患者さん自身でアイシングや湿布などをして、放置されるケースが3割ほどあるようです。「骨折はしていなさそうだから平気」と思われる患者さんが多い傾向です。しかし、軽度の足関節捻挫であっても何度も繰り返せば、足関節が不安定な状態になってしまいます。
☞ 慢性足関節不安定症:足関節の内返し捻挫を繰り返すことにより、
慢性的な足関節の不安定感を抱いてしまう状態となります。
《具体的な症状としては下記のようになります》
①わずかな傾斜や段差でもガクッと内返しに捻り易くなった。
②しゃがむことや正座で痛みが生じるようになった。
③スポーツ中やスポーツ後に痛みを生じてしまう事がある。
④サポーターやテーピングをしないと不安でスポーツが出来ない。
⑤長時間の歩行や階段の昇降、ランニングで痛みが生じやすくなった。
などです。
また、整形外科でレントゲン検査をしても骨折はしていないからと、湿布薬だけを渡されて様子を見るというケースがとても多く見受けられます。
そのため、初期固定がなく、翌日に歩くのが辛いということで、転療されてくる患者さんがとても多い傾向です。
足関節捻挫で軽症の場合には、歩行時の痛みは数日で軽減するため、自然に治ったと勘違いをされて、様子を見てしまう方も多いです。いざ正座やあぐらをしてみると痛みで体重を掛けられず、治ってはいない事に気づかれます。その様な場合に、整形外科の再診を受けられ、またレントゲン検査をして、骨折は無いから大丈夫でしょうと言われてしまい、症状が取れずに転療されて来られる方も多数おります。
☞ 捻挫の際にはレントゲン上骨折が無くても、靭帯損傷や関節包損傷、
筋腱損傷が合併して生じております。腫れ(腫脹)は毛細血管が損傷
を受けたために生じた内出血(血腫)です。
『参考までに受傷当日に来院された右足関節捻挫の外観写真です』
☞ 下記写真:右足関節捻挫(主に前距腓靭帯損傷、三角靭帯損傷)後の
外果周囲と内果周囲の腫脹の健側(左足関節)との比較。
下記写真では外側部に高度な腫脹が認められます。
足関節を強く内返しに捻挫をして、腓骨遠位端部を骨折した場合には靭帯、関節包、筋腱損傷を合併していることが多々有ります。腓骨遠位端骨折が1ヵ月程度で修復されても靭帯損傷部分などは修復されてはいないため、靭帯部分の痛みや圧痛が残存します。整形外科ではレントゲン検査で骨折は治っているので大丈夫と言われて治療を終えられてしまう患者さんが多い傾向ですが、軟部組織(靭帯等)に対する治癒の評価がされておらず、この時点では患者さんのほとんどの方が足関節の関節可動域制限を残し、正座・あぐらが困難です。
つまり、骨折が治っていても捻挫(靭帯損傷)症状は治っていないのです。
【当院における足関節捻挫の治療方針】
① 足関節のアライメントを改善します。
☞距骨前方亜脱臼の整復を行います。
同時に、 整復動作で靭帯のめくれを改善し整えます。
② アイシングにより腫脹と疼痛を最小限にします。
③ 足関節を背屈5度~10度でギプス固定またはプラスチックシーネと特別
な巻き方の包帯法で固定処置をします。
症状の強弱で固定材料を選択して使用しております。
☞前距腓靭帯が一番近づく位置での固定が重要で、入浴時に固定は
外しません。
④ 治療経過で超音波バスによる温熱療法とリハビリ(機能訓練)を行います。
靭帯は筋肉のように鍛えることは不可能です。
関節の不安定感は足関節周辺の筋力を向上させることで補えます。
⑤ 靭帯部分の圧痛や癒合状態に合わせて徐々に固定処置を変化させて
いきます。経過により、数週間後からテーピング固定やサポーター固定
にすることで入浴が可能になります。
⑥ 日常生活上の歩行時痛が消えても、靭帯部分の圧痛や正座時の痛みが
残っていれば完治ではありません。来院時にはトータルな治療計画表を
お見せしてご説明致します。
⑦ 足関節捻挫をした後に歩行時痛が取れて通院されなくなり正座やあぐらが
痛むと言われて再来院される方が多くおられた為、インフォームドコンセント
(丁寧な説明と患者さんの納得)を大切にしております。
⑧ スポーツの特性に合わせ、捻挫を繰り返さないようなリハビリ(機能訓練)
を指導します。
バスケットボール、バレーボール、バドミントン、サッカー、ハンドボール、
野球、ラグビーなどの足関節捻挫を繰り返しやすい競技の特性に応じた
リハビリ(機能訓練)を行います。
⑨ 予防テーピングでの競技復帰を徐々にサポートしていきます。
平日の早朝や土曜、休日に予防テーピング固定をしております。
体育、部活練習前や試合前の予防テーピングはご相談ください。
足関節捻挫(靭帯損傷)でお悩みの方は、様子を見ずに早めに来院下さい。
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