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2017年07月26日|マレットフィンガー
7月6日より、京都から60代の女性で陳旧性の腱性マレットフィンガーの患者さんが通院されております。
4月25日に路上でつまずいて転倒され、右手の薬指を地面に突いて負傷されました。同日に整形外科を受診され、レントゲン上は骨に異常は無く、腱が断裂したタイプの腱性マレットフィンガーの診断で、アルフェンスシーネでの固定を受けられました。
その後、5月末に37日間(5週間と2日)の固定後、全日のアルフェンスシーネの固定を除去されて間もなく、受傷時のように第一関節(DIP関節)が曲がってしまったとのことでした。
☞ 通常は約6週間~8週間の固定期間が必要です。
それから1か月ほど過ぎたある日にお電話を頂き、京都からわざわざ来院下さいました。(受傷から72日目・約2か月経過)
下記が来院時の第一関節(DIP関節)の最大伸展時と最大屈曲時の外観です。
第一関節(DIP関節)の最大伸展は-50度で最大屈曲は70度(左の健側の薬指は最大屈曲75度)で、写真のように浮腫が強く発赤も認めました。また、第二関節(PIP関節)にもわずかながら屈曲制限(右105度・左110度)を認めたので、1/f(ゆらぎ)SSP通電・音楽療法、超音波バスによる温熱療法後にアイシング(温・冷交代療法)を施行しました。
また、患者さんの薬指に合わせてプラスチックシーネを作成して、取り敢えず入浴時以外の第一関節(DIP関節)のみの再固定を施行しました。また、入浴時には第一関節(DIP関節)をテーピングで固定して、第二関節(PIP関節)の屈伸運動のリハビリと温・冷交代浴をして頂くようにご指導しました。
遠方の方なので、次回来院できるのは2~3週間後とのことでしたので、ご自宅で上手に固定処置とリハビリをして頂くようお願いしました。
下記が約3週間後の7月25日に来院された際の外観写真です。
小指に隠れてしまい分かり難いですが、第一関節(DIP関節)の最大伸展約-5度、最大屈曲51度(翌日は60度)と改善していました。浮腫も発赤も可なり軽減しておりました。
初検時の7月6日の第一関節(DIP関節)は最大伸展-50度で、最大屈曲70度の20度しか可動域は有りませんでしたが、現在は-5度から60度の55度の可動域に改善されました。伸展が45度改善した分、屈曲が70度から60度になってしまいまいましたが、これから充分に改善できると思います。
私自身、京都から患者さんが本当に来られるのか半信半疑だったのですが、以前も大阪の陳旧性腱性マレットフィンガーの女性が東京への出張のついでに来院されたのを思い出しました。患者さんにとっては第一関節が曲がったままでは見た目も気になりますし、機能的にも切実な問題なのだと改めて感じました。
現在、腱性マレットフィンガーの患者さんは25名程通院されておりますが、早めに転療頂いた患者さんはわずかな可動域制限のみの残存かほぼ完治されており、日常生活に支障なく改善されております。
※陳旧性腱性マレットフィンガーとは、負傷から数か月以上治療しても指の関節の機能改善が認められず、経過が不良な状態の腱性マレットフィンガーのことを指します。
腱性マレットフィンガーは第一関節(DIP関節)の伸筋腱断裂ですが、固定装具やアルフェンスの不適切なサイズ、指に合わないプラスチックシーネ等の固定が第二関節(PIP関節)を含むことにより、第二関節(PIP関節)の拘縮症状を発症してしまいます。 また、痛みを伴わないはずの腱性マレットフィンガーにもかかわらず、伸筋腱の断裂部分への強い圧迫固定により、痛みを訴えて来院される患者さんがとても多くおられます。
下記は40代男性で受傷から2週間後の来院時の状態です。
他医での初診から1週間後の再診時に担当医がバンド部分を強く締めすぎて、受傷部は陥没し爪床部に水疱形成が認められました。
上記の患者さんは約2か月が経過し、幸い経過は良好です。
【腱性マレットフィンガーの治療の現状】ー当院に転療された症例からー
①正直なところ固定処置の下手な先生が多いのは悲しい現実です。
②第一関節(DIP関節)の拘縮を恐れて固定期間が短か過ぎる傾向です。
③約6~8週間の固定後に、夜間固定をしない先生がとても多くいます。
④治療経過は,固定だけして2~8週間後の再診の指示では患者さんがお困りです。
⑤良くなるかはあなたの運次第と言われた患者さんがおります。
⑥痛みが無い(少ない)ため、同情心に欠ける医療者側の対応が問題です。
⑦固定具の状態で痛みが有り、再診日よりも早めに受診すると嫌な顔をされ
なぜ早く来院したのかと言われた患者さんがおります。
⑧開業整形外科に行き、総合病院の整形外科の手の外科専門医へ紹介されたが、
うちで診る疾患ではないと前の整形外科に戻された患者さんがおります。
⑨開業整形外科へ行き、大学病院の整形外科の手の外科専門医へ紹介されたが、
固定装具が代わって、かえって痛みが出てしまった患者さんが通院中です。
⑩開業整形外科を受診したら、担当医から私は開業して20年以上になるが、今まで
腱性マレットフィンガーの患者さんを最後まで治療したことは無く、完治した患者さん
を1人も見たことが無いと言われたという患者さんが来院されております。
《腱性マレットフィンガーでお困りの患者さんへ》
上記のような場合には、躊躇せずに転療されたほうが得策です。もしも、固定除去後に第一関節(DIP関節)が再屈曲してしまった場合には、取り敢えずテーピング等で第一関節(DIP関節)のみを伸ばして固定すると、第一関節(DIP関節)は再び伸びてきます。
固定具や固定期間の状況にもよりますが、日中に良く手を使う方は第一関節(DIP関節)をテーピングで固定して再屈曲しないように防止して下さい。同時に一定期間は夜間固定を約8時間、毎日欠かさずに行う必要が有ります。
年齢等の個人差は有りますが、夜間固定の除去の時期は、一日固定をせずに日常生活を送って頂き、朝と晩で比べて第一関節(DIP関節)が全く屈曲しない状態になった時に、試しに除去して下さい。
整形外科医で、手の外科専門医で有名な石黒隆先生は、著書の中で数か月間の夜間固定の必要性を指摘しております。
年齢にもよりますが、適切な治療さえ施されれば腱性マレットフィンガーは骨性マレットフィンガーよりも後遺症を残し難い疾患です。
当院で初期から治療された腱性マレットフィンガーの患者さんでは、50歳以下であれば、90%~100%の機能的改善が認められております。
陳旧性の腱性マレットフィンガーの患者さんでも、50歳以下であれば、75%~95%の機能的改善が認められております。
腱性マレットフィンガーの患者さんでお困りの方は上記を参考にして頂ければ幸いです。現在、腱性マレットフィンガーの患者さんで混み合う事は有りませんが、受傷からの経過をメモ書きにしてお持ち頂ければ幸いです。特に予約は要りませんが、来院される日時を電話かメールでご連絡頂ければ幸いです。宜しくお願い致します。
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